経営承継円滑化法 | 【公式】札幌相続遺言相談室・女性司法書士が対応
平成20年10月1日に「中小企業における経営の円滑化に関する法律」が施行されました。
(但し、遺留分に関する民法の特例は平成21年3月1日より施行)
相続税の納税猶予
これを受け、平成21年度税制改正で「取引相場のない株式等に係る相続税の納税猶予制度」を中心とする事業承継税制が創設されました。
そしてこの事業承継税制には、平成30年度税制改正で、これまでの事業承継税制とは別に、大幅に拡充された10年間限定(平成39年12月31日まで)の特別措置が設けられました。
特別措置の事業承継税制主な特長
1) 自社株を承継する際、贈与税と相続税が実質かかりません。従来の納税猶予株式の上限(発行済議決権株式総数の3分の2)が撤廃され、相続の場合の猶予割合(80%)も撤廃されました。
これにより、後継者は大幅に相続税を減額できます。
2) 雇用確保要件も実質撤廃になりました。自社株を生前贈与した以降の5年間、平均で当初の80%の雇用者数の維持が義務付けられていますが、この80%を下回った場合でも、理由書を都道府県に提出すれば猶予税額を払わなくても良くなったのです。
この特別措置の事業承継税制の適用は、期間が限られていますし、認定支援機関という専門家による「特例承継計画」の作成・提出が必要になること等の細かい条件がありますのでご注意ください。
遺留分に関する民法の特例
一定の要件を満たす後継者のいる企業については、先代経営者の遺留分権利者全員によって次の合意をし、所要の手続きを経ることによって以下の遺留分に関する民法の特例を受けることができます。
1)の除外合意と2)の固定合意の双方又はいずれか一方の合意を必ずする必要があります。
これらの合意をした場合には、それと併せて3)の付随合意をすることができます。
1)先代経営者から後継者が贈与を受けた株式等について遺留分算定の基礎財産から除外する合意をすることができます。(除外合意)
⇒この合意ができれば、後継者に自社株式を集中しても遺留分減殺請求をされることがなく、株式の分散を防ぐことができ、後継者の安定した経営権を確保することができます。
2)先代経営者から後継者が贈与を受けた株式等の評価額をあらかじめ固定する合意をすることができます。(固定合意)
⇒通常の制度においては、生前贈与した自社株式の評価は相続発生時の時価によるため、生前贈与を受けた後継者は、自身の頑張りによって会社の業績を上げれば上げる程、遺産の総額が増えるために相続税はあがり、遺留分は増加し、さらには遺産分割協議を困難にしてしまう可能性もあります。
この制度では、生前贈与株式等の評価を合意時点の評価額に固定することができます。なお、もし株価が下落した場合には後継者に不利な合意になってしまうので、慎重な検討が必要です。
3)後継者が贈与を受けた株式等以外の財産や後継者ではない者が贈与を受けた財産について遺留分算定の基礎財産から除外する合意をすることができます。(付随合意)
⇒後継者ではない相続人への生前贈与等について遺留分算定の基礎財産としないことをオプションで合意することにより、後継者ではない相続人への生前贈与等についても遺留分減殺請求をされることがなく、後継者と後継者ではない相続人間の贈与のバランスをとることで推定相続人間の合意の形成に役立ちます。
民法特例の手続き
この合意をしたときには、後継者は合意をした時から1ヶ月以内に申請書を提出して経済産業大臣に確認を受けることができ、その確認を受けた日から1ヶ月以内に家庭裁判所に許可を申し立てなければなりません。
家庭裁判所の許可により合意は効力を生じます。
この記事を担当した司法書士

司法書士法人いとう事務所
代表
伊藤 みゆき
- 保有資格
司法書士 相続アドバイザー(上級) 終活カウンセラー
- 専門分野
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相続・遺言・民事信託・生前贈与
- 経歴
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司法書士法人いとう事務所の代表を勤める。15年以上、札幌のみなさまの相続手続・不動産の相続登記・遺言書作成・相続放棄・生前贈与等に関するお手伝いをさせていただいている。上級相続アドバイザーや終活カウンセラーの資格も取得しており、相続手続に関する適切な順序や、どの専門家へ相談するべきかについて的確にアドバイスしている。